旅行中の食べすぎ、ヨガで消費できる?

Physiology

旅行中は、ついつい食べすぎてしまうことがあります。

せっかく来たから現地の料理を食べたいし、カフェにも行きたいし、お酒ものみたい。普段より食事の回数が増えたり、甘いものを食べたりすることもあります。

一方で、私は旅行中もよくヨガをします。そして観光をしていると、気づけば一日中歩いていることも少なくありません。

そんなとき、ふと疑問に思いました。

「旅行中に食べすぎても、たくさん歩いてヨガをしていたら、その分カロリーは消費できるのだろうか?」と。

食べすぎたエネルギーは、すぐに脂肪になるのでしょうか。食べることで代謝は上がるのか、歩行やヨガではどのくらいのエネルギーを消費するのか。

今回は、食べすぎとエネルギー代謝の仕組みを、旅行中の歩行やヨガとあわせて研究などを参考に考えていきます。

スポンサーリンク

食べすぎたエネルギーはどうなる?

食事から摂取したエネルギーは、すべてがそのまま体脂肪として蓄積されるわけではありません。

食事に含まれる糖質・脂質・タンパク質は消化・吸収されたあと、身体を動かしたり、体温を維持したり、臓器を働かせたりするためのエネルギーとして利用されます。また、食べ物を消化・吸収・代謝する過程そのものでもエネルギーが消費されます。

一方、摂取したエネルギーが消費したエネルギーを上回ると、その余剰分は身体に蓄えられます。

2020年に発表された過食に関するシステマティックレビューでは、1日〜6か月にわたる300以上の研究が検討されています。特に長期間の過食では、摂取する余剰エネルギーが多くなるほど、体重増加や脂肪蓄積も大きくなる明確な関係が確認されています。

ただし、余ったエネルギーがすべて同じように脂肪になるわけではありません。

糖質は、まずエネルギーとして利用されるほか、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして貯蔵することができます。脂質は脂肪組織に貯蔵されやすく、食事の栄養素によって身体での処理のされ方が異なります。

1995年の実験では、16人の男性に必要量より50%多いエネルギーを、糖質または脂質として14日間摂取させた結果、糖質を過剰摂取すると糖質の酸化と総エネルギー消費量が増加し、余剰エネルギーの約75〜85%が蓄積されました。

一方、脂質の過剰摂取では脂質の酸化やエネルギー消費の増加が小さく、約90〜95%が蓄積されました。

つまり、食べすぎる → その分がそのまま脂肪になる

という単純な仕組みではなく、食べる → 消化・吸収 → エネルギーとして利用 → 一部を貯蔵 → 余剰が続けば脂肪として蓄積

という流れで考えると分かりやすいと思います。

旅行後に増えた体重=すべて体脂肪ではない

旅行から帰って体重計に乗ると、「1〜2kg増えている」と驚くことがあります。しかし、短期間に増えた体重がすべて体脂肪とは限りません。

糖質はエネルギーとして利用されるほか、一部は肝臓や筋肉にグリコーゲンとして貯蔵されます。そして、グリコーゲンの貯蔵量が増えると、それに伴って体内の水分量も増加します。

人を対象とした研究では、グリコーゲンの貯蔵に伴い、グリコーゲン1gあたりおよそ3〜4g程度の体水分増加がみられることが報告されています。ただし、水分のすべてがグリコーゲンに直接結合しているわけではなく、水分摂取量などの影響も受けます。

単純なイメージなら、

グリコーゲン 100g増加
+それに伴う水分 約300〜400g
→ 体重として約400〜500g増える可能性

ということになります。

また、旅行中は外食によって塩分や糖質の摂取量が増えたり、消化管内に食べ物が残っていたりすることもあります。そのため、旅行直後の体重増加には、体脂肪だけでなく、水分・グリコーゲン・消化管内容物なども含まれています。

数日間の体重変化だけを見て、「食べすぎた分がすべて脂肪になった」と考えなくてよいので、安心してください。

食べすぎると代謝も上がる?

食事をすると、身体は食べ物を消化・吸収し、栄養素を利用したり貯蔵したりするためにエネルギーを使います。この食後に増加するエネルギー消費を、食事誘発性熱産生(DIT:Diet-Induced Thermogenesis)といいます。

つまり、私たちは食事からエネルギーを摂取する一方で、食べること自体にもエネルギーを使っています。

食事量が増えると、このDITも大きくなる傾向があります。食事量とDITの関係を調べたシステマティックレビュー・メタ解析では、摂取エネルギー量が多い食事ほど、食後のエネルギー消費も増加することが報告されています。

ただし、これは「食べすぎても代謝が上がるから太らない」という意味ではありません。 DITによって消費されるのは摂取したエネルギーの一部であり、消費量を上回るエネルギー摂取が続けば、余剰分は身体に蓄積されます。

また、DITの大きさは栄養素によって異なります。一般的にタンパク質は脂質や糖質よりも食後のエネルギー消費が大きく、高タンパク質の食事は低タンパク質の食事と比較してDITが大きくなることが報告されています。

このように、食べすぎたときには摂取エネルギーだけでなく、エネルギー消費も多少増加します。

では、私たちが1日に消費するエネルギーは、DIT以外にどのようなものがあるのでしょうか。

1日に消費するエネルギーは何で決まる?

1日に消費する総エネルギー量は、大きく3つから構成されます。
①基礎代謝量 約60~70% 
②食事誘発性熱産生 約10% 
③活動時代謝量 約20~30%
(日常生活のエネルギー消費量+運動によるエネルギー消費量)を合わせたものになります。

一般的に、1日のエネルギー消費の中で最も大きな割合を占めるのが基礎代謝です。基礎代謝とは、生命を維持するために最低限必要となるエネルギーのことで、呼吸や循環、体温維持、臓器の活動などに使われています。

次に大きく変動するのが身体活動によるエネルギー消費です。運動やスポーツだけでなく、歩く、階段を上る、仕事をするといった日常生活の活動も含まれます。

そして、先ほど紹介した食事誘発性熱産生(DIT)。食べ物を消化・吸収・代謝する過程でもエネルギーが消費されます。

そのため、食べすぎたからといって、その分のエネルギーを運動だけですべて消費しなければならないと考える必要はありません。私たちの身体は、運動している時間だけでなく、一日を通して常にエネルギーを消費しています。

基礎代謝やDIT、身体活動によるエネルギー消費については、こちらでさらに詳しく解説しています。

では、その中でヨガによって消費されるエネルギーはどのくらいなのでしょうか。

ヨガではどのくらいエネルギーを消費する?

運動の強度を表す指標のひとつに、METs(メッツ)があります。

1 METは安静に座っているときのエネルギー消費量を基準としたもので、数値が大きくなるほど運動強度が高くなります。

ヨガもスタイルによって運動強度が異なり、一般的なハタヨガなどの比較的穏やかなヨガから、パワーヨガのように運動量の多いものまで幅があります。そのため、「ヨガを1時間したら○kcal」と一律に考えることはできません。

Compendium of Physical Activities(2024)によれば
ハタヨガ、ヨガ一般 2.3メッツ
パワーヨガ 4.0メッツ
ホットヨガ 3.0メッツ
太陽礼拝 3.5メッツ
片鼻呼吸法 2.0メッツ
高強度ヨガ 8.0メッツ
となっています。

例えば、2.3 METsのヨガを体重50kgの人が1時間行った場合、

2.3 × 50kg × 1時間 × 1.05 ≒ 121 kcal

がひとつの目安になります。

一方、4 METs程度のより活動量の多いヨガなら、

4 × 50kg × 1時間 × 1.05 ≒ 210 kcal

となります。

もちろん、実際の消費エネルギーは体重や筋肉量、ポーズ、動きの速さ、休息時間などによって変わります。

食べすぎた分はヨガで消費できる?

たとえば普段より500 kcal多く食べたとしても、「500 kcal分のヨガをすればなかったことになる」と単純に考える必要はありません。

身体では食後のDITが増加し、日常生活や基礎代謝でもエネルギーが使われています。また、エネルギーの利用や貯蔵はその瞬間だけで完結するものではなく、一定期間のエネルギーバランスの中で変化していきます。

旅行中に食べすぎたとしてもヨガだけで消費しようとするのではなく、基礎代謝や日常の活動も含めた、1日のエネルギー消費全体で考えることが大切です。ヨガは日常的に身体を動かす習慣のひとつとして考える方が適切だと思います。

そもそも、ヨガだけで食べすぎた分のエネルギーをすべて消費するのは現実的ではありません。

旅行中の「歩く」でもエネルギーは消費する

旅行中は、普段より歩く時間が長くなることがあります。観光地を巡ったり、駅からホテルまで歩いたり、街を散策したりと、特別に運動をしているつもりがなくても身体活動量は増えていきます。

通常の歩行は速度によっておよそ3〜5 METs程度に分類されています。例えば、約4.5〜5.1 km/hの歩行は3.8 METsとされています。

仮に体重50 kgの人が3.8 METs程度の速さで歩いた場合、

3.8 METs × 50 kg × 1時間 × 1.05 ≒ 200 kcal

となります。

2時間なら単純計算で約400 kcalですが、この計算には安静時にも消費するエネルギーが含まれるため、「歩いたことで追加された消費カロリー」そのものはこれより少なくなります。

旅行中は一度に2時間歩くわけではなくても、朝から夕方まで少しずつ歩くことで、結果としてかなり長い歩行時間になることがあります。

また、歩行の消費エネルギーは体重、歩く速度、時間、坂道、荷物の重さなどによって変化します。坂道を歩いたり、荷物を持って移動したりする旅行では、平坦な道を身軽に歩く場合より運動強度が高くなることもあると思います。

食べすぎた翌日だからといって、いつもより激しい活動をする必要もありません。その日の体調に合わせて、いつものヨガの練習をしたり、歩いたりするだけでも身体活動になります。

旅行中、実際にはどのくらい動いている?

私は旅行先でもヨガをすることが多いです。旅行中のある日の私の活動量を例に、ヨガや歩行によるエネルギー消費量を計算してみます。

1日に60分~90分のクラスを5クラス程度受けることがあります。さらに観光やヨガスタジオへの移動で街を歩いていると、1日の歩数が3万歩近くになることもあります。

体重50kgとして、強度が高めのヨガを4 METsと仮定すると、

4 METs × 50kg × 5時間 × 1.05
= 約1,050 kcal

また、3万歩を約4.5時間、3.8 METs程度の歩行と仮定すると、

3.8 METs × 50kg × 4.5時間 × 1.05
= 約900 kcal

単純に合計すると、

ヨガ5時間:約1,050 kcal+ 歩行3万歩:約900 kcal
= 約1,950 kcal

これはMETsを使った推定値になります。約5時間すべてを同じ強度で動き続けるわけではなく、クラス中には話を聞く時間や休息、シャバーサナなどもあります。また、歩行の消費量も速度や坂道、荷物の有無などによって変化します。

ちなみに、この約1,950 kcalには、その時間に安静にしていても消費するエネルギーが含まれます。

自分で書いていても極端すぎと思いますが、実際に旅行中はこれくらい動く日があります。

ちなみに、このくらい動いている日は、夜に1食食べてお酒を飲み、日中はコーヒーを飲むくらいで過ごしていることも多いです。2〜3日の旅行でも、帰国すると「むしろ少し体重が減った?」と思うことがありますが、短期間の体重変化には水分量やグリコーゲンなども関係するため、体重が減った=その分だけ体脂肪が減った、というわけではありません。そのため、帰国後数日ですぐにもとに戻っています。

食後と空腹時、ヨガをするならどちらがエネルギーを消費する?

「空腹時に運動すると脂肪が燃えやすい」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。

実際、2016年に27研究・273人をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析では、食後に運動した場合と比較して、空腹時の有酸素運動では運動中の脂肪酸化量が多くなることが報告されています。

つまり、空腹時には身体がエネルギー源として脂肪を利用する割合が高くなる傾向があります。

しかし、ここで注意したいのが、

「脂肪を多く使う」=「消費カロリーが多い」

ではないということです。

2022年に発表された17論文・23研究をまとめたシステマティックレビューでは、空腹時と食後の運動について、エネルギー摂取量や消費量、空腹感などが比較されています。その結果、一部の比較ではむしろ空腹時運動の方がエネルギー消費量が低いという結果もみられました。一方で空腹感は強くなる傾向があり、研究方法上の問題もあるため、著者らは結果の解釈には注意が必要としています。

さらに、空腹時運動でその瞬間の脂肪酸化が増えたとしても、それが長期的に「より体脂肪が減る」ことを意味するわけではありません。空腹時と食後の有酸素運動を比較したレビューでは、体重や体脂肪の変化に明確な差は確認されていません(このレビューは5研究・96人と小規模)。

2025年の28研究・302人を対象としたメタ解析でも、空腹時の運動が食後の運動より糖・脂質代謝に一貫して優れているとは示されませんでした。

したがって、空腹時の運動では脂肪がエネルギー源として使われやすくなりますが、空腹時の方が多くのカロリーを消費する、あるいは体脂肪がより減るとは一概にいえません。

ヨガについても「空腹時に行った方がカロリーを多く消費する」と考える根拠は十分ではありません。そのため、ヨガを行う時間帯や、空腹時・食後といったタイミングだけで、消費カロリーが大きく変わるとは考えにくいです。エネルギー消費量は、実施するタイミングよりも、ヨガの強度や実施時間、体重などの影響を受けます。

一方で、食後すぐのヨガは推奨されておらず、満腹感によって前屈やツイスト、うつ伏せなどのポーズを不快に感じることもあります。カロリー消費を目的に空腹時・食後を選ぶというより、自分が無理なく動けるタイミングを選ぶと良いと思います。

食べすぎた旅行の後はどうしたらいい?

旅行中は、普段より外食が増えたり、現地の料理やスイーツ、お酒を楽しんだりして、食べる量が増えることは自然なことですが、帰国後に体重を測って、「増えてる……」と気になることもあるかもしれません。

前述した通り、旅行後の体重増加が、そのまますべて体脂肪の増加を意味するわけではありません。旅行から帰ってすぐの体重には、体脂肪だけでなく、水分やグリコーゲン、消化管内容物などの変化も反映されています。

もちろん、旅行中に摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば、その一部が体脂肪として蓄積されることもあります。しかし、「旅行中に食べすぎたから、帰ったら食事を抜こう」「たくさん運動して消費しよう」と、短期間で帳尻を合わせる必要はありません。

旅行中は食事量だけでなく、活動量も普段とは大きく変化します。観光で長時間歩いたり、階段を上ったり、荷物を持って移動したりと、気づかないうちに身体活動量が増えていることもあります。

旅行から帰ったあとは、極端に食事量を減らしたり、食べた分を運動で消費しようとしたりするよりも、普段の食事や生活リズム、身体活動に戻していくという考え方がシンプルです。

まとめ

旅行中は普段より食べる機会が増える一方で、観光で歩いたり、移動したり、ヨガをしたりと、身体活動量が増えることもあります。

食べすぎたエネルギーがすべてそのまま体脂肪になるわけではなく、旅行後の体重変化には水分なども影響します。

食べた分を運動ですべて消費しようとするのではなく、旅行中は食事も身体を動かすことも楽しみ、帰ったらいつもの生活に戻るというように、短期間の変化だけにとらわれず、少し長い目でエネルギーバランスを考えることが大切です。

ヨガもエネルギーを消費する身体活動のひとつです。食べすぎたからヨガをするというより、旅先でも気持ちよく身体を動かす選択肢としてヨガを取り入れてみるのはいかがでしょうか?

PhysiologyYoga Travel
スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
expeditionをフォローする
タイトルとURLをコピーしました